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ダンジョンズ&ドラゴンズとTRPGの歴史:すべてのRPGのルーツ

1974年にテーブルの上で始まったダンジョンズ&ドラゴンズが、どのようにTRPGというジャンルを生み、MUDから『バルダーズ・ゲート3』までビデオゲームのRPGに影響を与えたのかをまとめます。

#ダンジョンズ&ドラゴンズ #TRPG #ボードゲーム #RPG #バルダーズ・ゲート3

経験値、レベル、ヒットポイント、職業、サイコロで決める命中判定。今のRPGでは当たり前のこうした概念の多くは、1冊のルールブックから始まりました。1974年に出た『ダンジョンズ&ドラゴンズ(Dungeons & Dragons、D&D)』です。コンピューターではなく紙と鉛筆、サイコロで遊ぶこのゲームは、テーブルトークRPG(TRPG)というジャンルを生み、ビデオゲームのRPGのほぼすべての系統に足跡を残しました。

この記事では、D&Dがウォーゲームからどう枝分かれしたのか、版を重ねてどう変わったのか、そしてMUDから『バルダーズ・ゲート3』までビデオゲームにどんな影響を与えたのかを見ていきます。

ミニチュア・ウォーゲームから生まれた

D&Dの直接の祖先はミニチュア・ウォーゲームです。テーブルの上に兵士の人形を並べ、ルールに従って部隊を動かして戦う趣味で、アメリカでは1960〜70年代に愛好会を中心に遊ばれていました。

ゲイリー・ガイギャックスは1971年、ジェフ・ペレンとともに中世戦闘のルール『チェインメイル(Chainmail)』を出しました。そこには魔法使いやドラゴンのようなファンタジー要素を加える追加ルールもありました。一方デイヴ・アーネソンは、『ブラックムーア』という自分だけのファンタジー世界で、部隊全体ではなく1人の英雄を担当して地下迷宮を探検する遊びをしていました。

この2つのアイデアを合わせて生まれたのがD&Dです。1974年、ガイギャックスらが設立した会社TSR(Tactical Studies Rules)が最初に出版しました。最初のセットは戦闘判定にチェインメイルのルールが必要なほどウォーゲーム色が濃いものでしたが、1977年の版になると戦闘もほとんど言葉で進めるようになり、人形なしでも遊べるようになりました。

TRPGはどう遊ぶゲームか

D&Dはボードゲームに似て見えますが、遊び方はかなり違います。

  • ダンジョンマスター(DM):1人が進行役となり、世界や出来事、モンスターや住民をすべて演じます。
  • プレイヤーキャラクター:ほかの人はそれぞれ戦士・魔法使い・僧侶といったキャラクターを1人担当し、その人物が何をするかを言葉で決めます。
  • サイコロ判定:成功か失敗かわからない行動は、サイコロを振って決めます。20面ダイス(d20)はD&Dの象徴になりました。
  • 成長:冒険を終えると経験値を得てレベルが上がり、強くなります。

勝ち負けを競うゲームというより、一緒に物語を作っていく遊びに近いものです。決まった盤面がないため、プレイヤーが思いついたどんな行動でも試せることが最大の魅力です。

ふつう1回集まって数時間遊ぶことを「セッション」と呼び、同じキャラクターで複数のセッションを続ける長い冒険を「キャンペーン」と呼びます。数か月、長ければ数年にわたって同じ仲間とキャンペーンを続けるグループも珍しくありません。キャラクターが死んだり引退したりすると新しいキャラクターで再び参加するため、ひとつの世界の歴史がプレイヤーたちの記憶の中に積み重なっていきます。

版を重ねたルールの変化

D&Dは50年の間に何度もルールを大きく改めてきました。

時期版主な内容
1974オリジナルD&DTSRが初めて出版
1977〜1979アドバンスドD&D(AD&D)ルールを整理した分厚いコアルールブック
2000第3版ウィザーズ・オブ・ザ・コーストが出版、d20システム
2008第4版戦術的な戦闘を重視
2014第5版シンプルで覚えやすいルールで大人気に
2024第5版改訂コアルールブック50周年に合わせた下位互換の改訂

会社の持ち主も変わりました。1997年、倒産寸前だったTSRを『マジック:ザ・ギャザリング』で成功したウィザーズ・オブ・ザ・コーストが買収し、1999年には玩具会社ハズブロがウィザーズ・オブ・ザ・コーストを買収しました。

第3版とともに登場した「オープン・ゲーム・ライセンス(OGL)」も重要です。d20システムのルールをほかの出版社が使えるようにしたことで、数多くの互換ルールブックや『パスファインダー』のような派生ゲームが生まれました。2023年、ウィザーズがこのライセンスを変えようとして反発を受けると、最終的に第5版の基本ルール文書(SRD 5.1)を撤回できないクリエイティブ・コモンズ(CC BY 4.0)ライセンスで公開しました。

D&Dが生んだゲーム用語

D&Dを遊んだことがなくても、私たちはすでにその用語を使っています。ビデオゲームRPGの基本文法の多くが、D&Dのルールブックから来ているからです。

D&Dの概念意味ビデオゲームでは
能力値筋力・敏捷力・耐久力・知力・判断力・魅力の6つの数値キャラクター作成画面のステータス
ヒットポイント(HP)倒れるまでに耐えられるダメージ量体力ゲージ
アーマークラス(AC)攻撃がどれだけ当たりにくいか防御力
クラス(職業)戦士・魔法使い・盗賊・僧侶といった役割タンク・アタッカー・ヒーラーの役割分担
経験値とレベル冒険で積み重なる成長レベルアップ
属性(アラインメント)善と悪、秩序と混沌で分けた性格道徳的な選択システム

特に、戦士が前で耐え、魔法使いが後ろから大きなダメージを与え、僧侶が仲間を回復するという役割分担は、オンラインゲームのパーティー構成にそのまま受け継がれました。魔法使いが1日に使える呪文の数が決まっているというルールも、ビデオゲームではマナやクールダウンといった形に姿を変えて残っています。

1980年代の「モラル・パニック」

D&Dはいつも歓迎されたわけではありません。1980年代のアメリカでは、一部の宗教団体やメディアがD&Dを悪魔崇拝や若者の自殺と結びつけて非難しました。根拠の薄い主張でしたが、しばらくの間D&Dは「危険なゲーム」というイメージを背負うことになりました。この出来事は、のちにビデオゲームが暴力性をめぐる論争に直面したときにも、よく比較される例になりました。

コンピューターへ移ったダンジョン

D&Dを遊んでいた大学生やプログラマーたちは、やがてこの遊びをコンピューターに移し始めました。

  • MUD:1970年代末、イギリスのエセックス大学でロイ・トラブショウとリチャード・バートルが作った、複数の人が同時に接続するテキストアドベンチャーです。のちのオンラインRPGやMMORPGの直接の祖先となりました。
  • ゴールドボックス・シリーズ:1988年にSSIが出した『プール・オブ・レイディアンス』は、AD&Dのルールを家庭用コンピューターに移した初の公式ゲームでした。
  • バルダーズ・ゲート (1998):バイオウェアがAD&Dのルールとフォーゴトン・レルムの世界観で作ったゲームで、コンピューターRPGの黄金期を開きました。

D&Dのライセンスを持たないゲームも、その構造を借りました。職業と能力値、経験値とレベル、ランダムな判定という骨組みは、洋ゲーRPGはもちろん、日本のRPGやオンラインゲームにも広がりました。

『バルダーズ・ゲート3』と新たな全盛期

2010年代後半から、D&Dは再び全盛期を迎えました。覚えやすい第5版、オンラインのビデオ通話での遊び、実際のプレイを見せる配信や動画がそろって人気を集めました。

ビデオゲームでは、ラリアン・スタジオの『バルダーズ・ゲート3』が頂点を極めました。D&D第5版のルールをもとに作られたこのゲームは、2023年8月3日にPCで先に発売され、主要なゲーム賞5つすべてでゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞した初めての作品になりました。サイコロを振る様子がそのまま画面に映る演出は、コンピューターゲームが50年前のテーブルの上の遊びをいかに忠実に受け継いだかを示しています。

TRPGを初めて遊んでみたいなら

TRPGはルールブックが分厚く見えて始めにくく感じますが、入り口は意外とたくさんあります。

  1. 無料の基本ルールから:ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは基本ルール文書(SRD)を無料で公開しています。
  2. 短い単発シナリオ:3〜4時間で終わる「ワンショット」のシナリオから始めれば負担が少なくて済みます。
  3. デジタルのボードゲーム:『グルームヘイヴン』のように、カードと盤面でTRPGの戦闘の感覚を再現したボードゲームも良い入門作です。
  4. ビデオゲームのRPG:『バルダーズ・ゲート3』でルールを体で覚えてから、テーブルへ移る人も多くいます。

D&Dは「一緒に想像する遊び」をルールにした最初の成功例です。私たちが今遊んでいるRPGのレベルアップの効果音ひとつにも、50年前にテーブルの上を転がっていたサイコロの音が込められている、と言っても言い過ぎではありません。

参考資料

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