KEKE STUDIO
  1. ホーム
  2. ブログ
  3. ゲームグラフィックの進化:ピクセルからレイトレーシングまで

ゲームグラフィックの進化:ピクセルからレイトレーシングまで

ベクタースキャン画面とピクセルアートから、ポリゴン3D、GPUとシェーダー、物理ベースレンダリング、レイトレーシングとAIアップスケーリングまで、ゲームグラフィック技術の流れをまとめます。

#ゲームグラフィック #ピクセルアート #GPU #シェーダー #レイトレーシング

ゲームグラフィックは数十年の間に、いくつかの点から映画に近い画面へと変わりました。しかし、この変化は単に「どんどん良くなった」とまとめられるものではありません。どの時代にもハードウェアの限界があり、開発者たちはその限界の中で表現方法を工夫してきました。その工夫が、次の時代の技術になることもありました。

この記事では、ベクタースキャン画面とピクセルアートから始まり、3Dポリゴン、グラフィックアクセラレーターとGPU、シェーダー、物理ベースレンダリング、そしてレイトレーシングとAIアップスケーリングまで、ゲームグラフィックがたどってきた主な段階を順に見ていきます。

線と点の時代:ベクターとラスター

初期のアーケードゲームには、2つの画面方式が共存していました。1つは電子ビームで線を直接描くベクタースキャンディスプレイで、『アステロイド』や『テンペスト』といったゲームがこの方式を使っていました。線は非常にくっきりしていましたが、面を塗りつぶしたり色を豊富に使ったりするのは困難でした。家庭用としては、光速船(Vectrex)というベクター方式のゲーム機も登場しました。

もう1つは、テレビのように画面を横線で走査して点(ピクセル)を打つラスター方式です。最終的に市場の主流になったのはラスターで、ベクターディスプレイは1980年代半ば以降ほぼ姿を消しました。ラスター画面では、小さな絵の断片であるスプライトを背景の上で動かす方式が定着しました。

制約が生んだ芸術:8ビットと16ビットのピクセルアート

8ビットと16ビット時代のゲーム機は、1画面に使える色の数、スプライトの大きさと数、メモリのすべてが厳しく制限されていました。そのため、デザイナーは点の1つ1つの位置と色を自ら決める必要がありました。このように意図を持ってピクセルを配置した絵を、今日ではピクセルアート(ドット絵)と呼びます。

この時期に使われた表現技法は、今もよく使われています。

  • パレット切り替え:同じ絵の色だけを変えて、別の敵や別のプレイヤーを表現しました。
  • ディザリング:2色の点を交互に打ち、中間色のように見せました。
  • 多重スクロール(パララックススクロール):背景のレイヤーごとに動く速さを変えて、奥行きを出しました。

ピクセルアートは、技術的な制約がなくなった後も1つの美術様式として生き残りました。今では少人数でも統一感のある雰囲気を作れるという利点から、インディーゲームで特によく選ばれています。

3Dポリゴンの登場

1990年代初頭、三角形や四角形のような多角形(ポリゴン)をつなぎ合わせて立体を作る3Dグラフィックが、ゲームに本格的に取り入れられました。

年ゲーム・機器意味
1993スターフォックス(スーパーファミコン)カートリッジにスーパーFXチップを搭載し、家庭用ゲーム機でポリゴン3Dを実現
1993バーチャファイター(アーケード)完全な3Dポリゴングラフィックを使った初のアーケード格闘ゲーム
1994プレイステーション(日本発売)3Dポリゴン表現を設計の中心に据えた家庭用ゲーム機

セガの『バーチャファイター』は、面を単色で塗ったポリゴンでキャラクターを作りましたが、当時はそれだけでも大きな衝撃でした。ソニーはこのゲームの成功を見て、プレイステーションの方向性を3Dポリゴン中心に定めました。ポリゴンに画像を貼り付けるテクスチャマッピングが普及すると、3D画面は急速にリアルさを増していきました。

グラフィックアクセラレーターとGPU

PCでは、3Dの計算をすべてCPUで処理するのは荷が重いものでした。この問題を解決したのが、独立した3Dアクセラレーターカードです。

1994年に設立された3dfxは、Voodoo Graphicsチップで PCの3Dアクセラレーター市場を切り開きました。1990年代後半には、多くの3Dゲームが3dfxのGlide APIに対応しているのが当たり前なほどでした。しかし競争が激しくなるにつれて3dfxは苦境に陥り、2000年末にNVIDIAが3dfxの資産の大部分を買収しました。

NVIDIAは1999年にGeForce 256を発売し、「世界初のGPU」という表現を使いました。それまでCPUが行っていた座標変換と照明計算(T&L)を、グラフィックチップが直接処理するようにしたのが核心です。それ以降、グラフィックカードは単なる補助装置ではなく、ゲームの性能を左右する中核部品になりました。

シェーダー:プログラム可能なグラフィック

初期のグラフィックチップは、決められた方法でしか画面を描けない固定機能パイプラインの構造でした。2001年にNVIDIAのGeForce 3がプログラム可能なピクセルシェーダーに初めて対応したことで、状況が変わりました。シェーダーとは、点(頂点)や画面の各ピクセルをどう処理するかを開発者が自ら書く小さなプログラムです。

シェーダーのおかげで、次のような表現がリアルタイムのゲームで可能になりました。

  • 法線マッピング(ノーマルマッピング):少ないポリゴンのモデルに表面の凹凸情報を持つテクスチャを貼り、はるかに精密に見せる技法です。2000年代初頭のPCゲームや『バーチャファイター4』(2001)などで使われ始め、Xbox 360・PS3世代にはほぼ標準になりました。
  • 動的な影と反射、水の表現:場面に応じて変わる光の効果を計算できるようになりました。
  • ポストエフェクト:画面全体にブルーム、被写界深度、モーションブラーなどをかける方式です。

その後、グラフィックハードウェアは頂点シェーダーとピクセルシェーダーを別々に持たず、同じ演算ユニットがすべての処理を分担する統合シェーダー構造へと進化しました。この汎用性のおかげで、GPUはのちに人工知能の計算にも広く使われるようになります。

物理ベースレンダリング:光を模倣する方法の標準化

2010年代には、質感の表現方法が大きく整理されました。以前は、アーティストが場面ごとに輝きや反射の度合いを目分量で合わせることが多くありました。物理ベースレンダリング(PBR)は、金属度や粗さといった物理的な性質を基準に質感を定義し、光が表面でどのように反射するかを一貫した式で計算します。

PBRの利点は、照明が変わっても質感が自然に見えることです。2013年に『リメンバー・ミー』がUnreal Engine 3を改造して部分的に導入し、同じ年に『Ryse: Son of Rome』と『KILLZONE SHADOW FALL』が続きました。その後、Unreal Engine 4をはじめとする主要エンジンが物理ベースのマテリアルを標準として採用し、業界標準になりました。

レイトレーシング:古い理論がリアルタイムになるまで

これまでのゲームグラフィックは、ほとんどがラスタライズ方式でした。3Dの図形を画面のピクセルに投影して素早く描く方法です。一方、レイトレーシングは光の経路を光線単位で追跡し、反射、屈折、影を計算します。

レイトレーシングのアイデアは古くからありました。1968年にアーサー・アペルが光線を使って陰影のある画像を作る方法を発表し、1979年にはベル研究所のターナー・ホイッテッドが反射と屈折を再帰的に追跡する方式を示しました。ただし計算量が非常に多いため、長い間、映画のCGのように1つの場面を長時間かけて計算してもよい分野でしか使われませんでした。

転換点は2018年です。

  1. 2018年9月、NVIDIAが光線計算専用のユニット(RTコア)を搭載したGeForce RTX 20シリーズを発売しました。
  2. 同じ年の11月、『バトルフィールドV』がマイクロソフトのDirectX Raytracing(DXR)を通じてこの機能を使った初のゲームになりました。
  3. 2020年にAMDがハードウェアレイトレーシングに対応したRadeon RX 6000シリーズを発表し、PlayStation 5とXbox Series X|Sもレイトレーシング用のハードウェアを備えました。

現在、ほとんどのゲームは影や反射といった一部の効果にだけレイトレーシングを使い、残りはラスタライズで描くハイブリッド方式を採用しています。しかし、2025年に発売された『DOOM: The Dark Ages』のように、レイトレーシング対応のグラフィックカードを必須とするゲームも登場し始めました。

AIアップスケーリングとこれからの方向

レイトレーシングは今も負荷が大きいため、低い解像度で描いてから高い解像度に復元するアップスケーリング技術もあわせて進化しました。NVIDIAのDLSSは2018年にRTX 20シリーズとともに紹介され、2020年のDLSS 2からはゲームごとに個別に学習させなくてもよい方式に変わったことで広く普及しました。その後、中間フレームをAIで生成して挿入するフレーム生成機能も追加されました。2025年に発売されたNintendo Switch 2は、DLSSを使う初のゲーム機です。

この流れを見ると、ゲームグラフィックの進化の方向が少しずつ変わってきていることがわかります。かつてはより多くのポリゴンとより高い解像度が目標でしたが、今は光をどれだけリアルに計算するか、そしてその計算をどれだけ効率よく減らすかが中心的な課題になっています。

一方で、技術が進化するほど、あえてピクセルアートやシンプルな3Dスタイルを選ぶゲームも増えました。優れたグラフィックとは、スペックの高さよりも、ゲームの雰囲気とプレイをどれだけうまく伝えられるかにかかっているという点は、いつの時代も変わりません。

参考資料

あわせて読みたい