ゴルフゲームの歴史:ミニゴルフコースから物理パズルゲームまで
1910年代のミニゴルフから、アタリや任天堂の初期ゴルフゲーム、『みんなのGOLF』『Wii Sports』、『Desert Golfing』のような物理パズル型ゴルフゲームまでの流れをまとめました。
ゴルフは、ビデオゲームととりわけ相性のよいスポーツです。一つのボールを決められた方向と強さで打ってカップに入れるという目標がはっきりしていて、一打ずつ順番に進むため、いくつかのボタンだけでも十分に表現できるからです。そのためゴルフは、ゲーム機が初めて登場した時代から今に至るまで、絶えずゲームになってきました。
興味深いのは、ゴルフゲームが実際のゴルフを忠実に再現する方向と、ミニゴルフのように障害物やギミックを楽しむ方向に分かれて発展してきたことです。この記事では、ビデオゲーム以前のミニゴルフの歴史から始めて、初期のゴルフゲーム、広く親しまれたゴルフゲームシリーズ、そして最近の物理パズル型ゴルフゲームまで、順番に見ていきます。
ゲーム以前のゲーム、ミニゴルフ
ミニゴルフは、ゴルフから「パッティング」だけを切り出した遊びです。ふつうは10メートル以内の短いホールを人工芝やカーペット、コンクリートの上に作り、トンネル・スロープ・風車といった障害物を置いて、壁に跳ね返すショットまで考えさせます。国によって、クレイジーゴルフ、アドベンチャーゴルフ、パターゴルフなどさまざまな名前で呼ばれています。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1912年 | イギリスの新聞『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』にミニゴルフコース「ゴフスタクル」が紹介される(記録上最も古い言及) |
| 1916年 | アメリカ・ノースカロライナ州パインハーストに「ジスル・ドゥ(This'll Do)」コースが作られる |
| 1922年 | トーマス・フェアバーンが、綿実の殻・砂・油・染料を混ぜた人工グリーンを開発 |
| 1927年 | ガーネット・カーターが「トム・サム(Tom Thumb)」コースの特許を取得 |
| 1920年代末 | ニューヨークだけで屋上コースが150か所以上、アメリカ全土で数万か所に |
| 1930年代 | 大恐慌により、アメリカのコースの大半が閉鎖 |
| 1937年 | スウェーデン・ミニゴルフ連盟が創設される。現存する最古のミニゴルフ競技団体 |
アメリカで始まったミニゴルフブームはヨーロッパへ渡り、ドイツやスウェーデンなどに規格化されたコースが広まりました。スウェーデンでは1939年から毎年全国選手権が開かれています。ミニゴルフの核心は、「どんな角度で壁に跳ね返せばボールがカップに入るか」を計算する楽しさです。この楽しさは、のちにビデオゲームのゴルフパズルへとそのまま受け継がれていきます。
初期のビデオゴルフゲーム(1970〜1980年代)
家庭用ゲーム機が登場すると、ゴルフはすぐにゲームになりました。
- 1979年:マグナボックスのビデオパック(オデッセイ²)向けのゴルフゲームが登場しました。
- 1980年:Atari 2600向けの『Golf』が登場しました。開発者のマイケル・ロレンゼンは、このゲームを2キロバイトのROMカートリッジに収めるのに苦労したと振り返っています。9ホールを1〜2人で楽しむシンプルなゲームでした。
- 1984年:任天堂とHAL研究所が作ったファミリーコンピュータ用『ゴルフ』が日本で発売され、北米では1985年にNES向けに発売されました。
任天堂の『ゴルフ』は特に重要な作品です。NES・ファミリーコンピュータで最も売れたスポーツゲームとなり、その後さまざまな任天堂のゲーム機で再発売されました。マリオが選手として登場した初めてのスポーツゲームでもあります。このゲームのプログラマーはのちに任天堂の社長となった故・岩田聡氏で、Nintendo Switchのシステムソフトウェアには、彼をしのぶ意味でこのゲームが隠し要素(イースターエッグ)として収録されていました。
アーケードでは、Incredible Technologiesの『Golden Tee Golf』(1989)が登場しました。トラックボールを転がす速さと方向でショットの強さと曲がり方を決める方式が特徴で、主にバーに置かれ、長く続くアーケードシリーズになりました。1995年には、筐体同士でスコアを比べる大会機能も試験的に導入されました。
ミニゴルフがゲームになる:カービィボウル
正統派のゴルフとは違う道を開いたゲームもあります。1994年にHAL研究所と任天堂がスーパーファミコン向けに作った『カービィボウル(Kirby's Dream Course)』は、丸いカービィをボールのように打ってホールに入れるミニゴルフゲームです。
もともとは「スペシャルティーショット」という独立したゲームとして作られていたものを、カービィの人気に合わせてキャラクターを差し替えた作品です。敵に当てて能力を得て、その能力で障害物を壊したり飛んだりする仕組みは、「ゴルフのルールの上にパズルとアクションを乗せる」流れの初期の例といえます。
誰もが楽しめるゴルフ:みんなのGOLFとWii Sports
1990年代後半からは、ゴルフゲームがより幅広い人々に届くようになりました。
みんなのGOLF(1997〜)
ソニーの『みんなのGOLF(Everybody's Golf、北米名Hot Shots Golf)』は、1997年にキャメロット・ソフトウェアプランニングが手がけた第1作から始まりました。その後はクラップハンズがシリーズを引き継ぎました。かわいいマンガ風のキャラクターと精密なボールの物理を両立させているのが特徴で、第1作からミニゴルフのコースも収録されていました。2017年3月までに、シリーズ累計販売本数は1,400万本を超えました。
任天堂側では、キャメロットが手がける『マリオゴルフ』シリーズが同じ流れを受け継ぎました。
Wii Sports(2006)
2006年にWiiとともに発売された『Wii Sports』には、テニス、野球、ボウリング、ボクシングとあわせてゴルフが収録されていました。リモコンを本物のゴルフクラブのように振る方式は、ゲームを遊んだことのない人でもすぐに理解でき、ゴルフゲームの操作をボタンから体の動きへと広げました。
物理パズルになったゴルフ:モバイルとインディーゲーム
スマートフォンが普及すると、ゴルフゲームはもう一度姿を変えました。指で引っ張って離す操作が、「ボールを打つ」という動作とよくなじんだからです。
| 年 | ゲーム | 開発 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 2011 | Super Stickman Golf | Noodlecake Games | プラットフォーマーとゴルフを組み合わせた2Dゲーム |
| 2014 | Desert Golfing | Blinkbat Games(ジャスティン・スミス) | どこまでも続く砂丘の上のミニマルなゴルフ |
| 2016 | Golf With Your Friends | Blacklight Interactive | 最大12人で遊べるミニゴルフ、2020年に正式リリース |
| 2017 | Golf Story | Sidebar Games | ゴルフを題材にしたRPGアドベンチャー |
| 2019 | What the Golf? | Triband | ゴルフのルールをひねったコメディ物理ゲーム |
『Desert Golfing』は、指一本で方向と強さを決めてボールを打ち、カップに入れるたびに新しいコースが続いていくゲームです。地面はすべて砂なのでボールは予測しにくい動きをし、終わりのない構造のため、スコアはどれだけ長く遊んだかで決まります。
『What the Golf?』は、デンマークのTribandが作り、2019年にApple Arcadeのローンチタイトルとして登場しました。開発陣は、ゴルフを「主にお金持ちがするスポーツなので、風刺しても安全な対象」と考えていたと明かしています。ボールの代わりに家や車を打つなど、レベルごとにゴルフのルールをひねったジョークが盛り込まれており、レベルを短くして、できるだけ多くのアイデアを詰め込みました。
これらのゲームに共通しているのは、実際のゴルフの再現よりも「ボールがどう跳ねて転がるかを予測する楽しさ」に集中していることです。これは、100年前のミニゴルフコースで壁に跳ね返す角度を計算していた楽しさと同じ根っこを持っています。
ゴルフゲームを選ぶ基準
ゴルフゲームは大きく、実際のゴルフを再現するシミュレーション型、キャラクターや誇張された演出を加えたカジュアル型、そしてゴルフのルールだけを借りてボールの軌道を解くパズル型に分けられます。同じゴルフでも、求める体験によって選ぶべきゲームは変わります。
| 求める体験 | おすすめの方向 |
|---|---|
| 本物のゴルフの感覚 | コースやクラブ、風を再現したシミュレーション型 |
| 家族や友達と気軽に | みんなのGOLF、マリオゴルフ、Wii Sportsのゴルフのようなキャラクター型 |
| 大勢でにぎやかに | Golf With Your Friendsのようなパーティー型ミニゴルフ |
| 短く頭を使いたい | Desert Golfing、What the Golf?のような物理パズル型 |
おわりに:一打に込められたパズル
ゴルフゲームは半世紀のあいだ画面や操作方法を変えてきましたが、核心はいつも同じでした。ボールをどこへ、どれくらいの強さで打つかを決め、その結果を見守る瞬間の緊張感です。特に、壁や障害物に跳ね返る角度を計算するミニゴルフ流の楽しさは、物理パズルゲームの中で新しい姿となって受け継がれています。
Keke StudioのRICOSHOT: Golf Puzzleもこの流れにあるゲームで、SFの雰囲気が漂う3D空間で、ボールを壁に跳ね返してホールに入れるルートを見つけるゲームです。
