メトロイドヴァニアの歴史 — メトロイドと悪魔城ドラキュラからホロウナイトまで
メトロイドヴァニアの意味と起源、メトロイド・スーパーメトロイド・月下の夜想曲が生んだ方程式、インディーの復興とホロウナイトまで、ジャンルの歴史と設計の特徴をまとめます。
「メトロイドヴァニア」は、2つのゲームシリーズの名前を組み合わせた言葉です。任天堂の『メトロイド』と、コナミの『キャッスルヴァニア(悪魔城ドラキュラ)』です。ジャンル名が特定のゲームから来ているという点で少し変わった用語ですが、今ではSteamで数千本のゲームに付けられるタグになるほど広く使われています。
この記事では、メトロイドヴァニアが何を意味するのか、1986年の『メトロイド』から始まった設計が1990年代の2つの傑作を経てどのように一つの方程式になったのか、そして2010年代のインディーゲームでどのように再び花開いたのかを順に見ていきます。
メトロイドヴァニアとは何か
メトロイドヴァニアはアクションアドベンチャーのサブジャンルです。日本では「探索型アクション」とも呼ばれます。主な特徴は次のとおりです。
- 複数の部屋が互いにつながった、一つの大きなマップがあります。
- 最初からすべての場所に行けるわけではなく、特定のアイテムや能力を手に入れることで、ふさがれた道が開きます。
- 新しい能力を得ると、すでに通った場所に戻って隠された道や近道を探すことになります(バックトラック)。
- マップは非線形ですが、実際には設計者が意図した主要なルートがあります。
たとえば二段ジャンプを得れば高い崖に登れるようになり、体を小さくする能力を得れば狭い通路を通れるようになります。このように能力がそのまま鍵になる構造が、メトロイドヴァニアを特徴づける最大の要素です。初期の作品はほとんどが2D横スクロールでしたが、今では3Dゲームや見下ろし型のゲームにもこの言葉が使われます。
用語の起源
「メトロイドヴァニア」という言葉を最初に作ったのが誰なのかははっきりしていません。『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』の助監督だった五十嵐孝司さんは、自分が作った言葉ではないと明かしています。ゲームジャーナリストのジェレミー・パリッシュ(Jeremy Parish)はこの用語を広めるのに貢献しましたが、1UP.comの同僚だったスコット・シャーキー(Scott Sharkey)から教わったと語っています。
この名前に反対する意見もあります。特定のゲーム名に由来するため、ゲームの遊び方を直接説明できないという理由です。1990年代に「DOOMクローン」という言葉が最終的に「一人称シューティング」に置き換わったように、「プラットフォームアドベンチャー」のような別の名前を使おうという提案もありました。日本では「メトロイドヴァニア」という表記が一般的になったのは比較的最近のことだと、日本のゲーム雑誌ファミ通が2020年に紹介しています。
起源:メトロイドとドラキュラII 呪いの封印
このような遊び方のゲームが『メトロイド』以前にまったくなかったわけではありません。1984年の『Below the Root』のような例もあります。しかし、ジャンルに最も大きな影響を与えた作品は、1986年に任天堂がファミリーコンピュータ ディスクシステムとNESで発売した『メトロイド』だと評価されています。
任天堂は当時、他のゲームと差別化された非線形のアドベンチャーを目指していました。他のゲームのパワーアップの多くが一時的だったのに対し、『メトロイド』で得る能力は永続的で、プレイヤーはその能力を使って来た道を引き返す必要がありました。
同じ時期、コナミの『悪魔城ドラキュラ』(1986年)はステージを順番にクリアしていく線形のアクションでした。ところが1987年の『ドラキュラII 呪いの封印』では、町とフィールドを自由に行き来する非線形の構造に挑戦しました。ただしその後のシリーズは再び線形の構造に戻り、『ドラキュラII』は次にどこへ行けばよいかを教えてくれる情報があまりにも曖昧だったという評価も受けました。
1990年代:2つの傑作が作った方程式
スーパーメトロイド(1994年)
任天堂とインテリジェントシステムズがスーパーファミコン向けに開発した『スーパーメトロイド』は、シリーズの探索の仕方を大きく磨き上げました。インベントリ画面、自動で描かれるマップ、8方向射撃が新たに加わり、多様なエリアと多くの秘密が追加されました。これらの秘密を使えば設計者が意図した順序を飛ばすこともできたため、スピードランのコミュニティで長く愛されるゲームになりました。
悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲(1997年)
悪魔城ドラキュラシリーズの五十嵐孝司さんには悩みがありました。熟練したファンはステージをすぐに通り過ぎてしまい、新しいプレイヤーは特定の区間で詰まってしまうのです。そこで彼は『ゼルダの伝説』のように広い世界を探索し、鍵となるアイテムを集める方式を取り入れました。さらに、経験値でキャラクターが成長するロールプレイング要素を加えました。
プレイステーションで発売された『月下の夜想曲』は、当初は販売が振るいませんでしたが、口コミで着実に売れ続け、代表的な隠れた名作となりました。その後、悪魔城ドラキュラシリーズの大半がこの方式を採用し、ゲームボーイアドバンスやニンテンドーDSで発売された続編で方程式がさらに洗練されました。五十嵐さん本人は、『月下の夜想曲』はメトロイドよりもゼルダから多くの影響を受けたと語りつつも、メトロイドヴァニアという名前はよく合っていると評価しています。
代表作をひと目で
| 年 | ゲーム | 開発 | 意義 |
|---|---|---|---|
| 1986 | メトロイド | 任天堂 | 永続パワーアップと引き返し探索の出発点 |
| 1987 | ドラキュラII 呪いの封印 | コナミ | 悪魔城ドラキュラ初の非線形への挑戦 |
| 1994 | スーパーメトロイド | 任天堂、インテリジェントシステムズ | 自動マップ・秘密の設計でジャンルを洗練 |
| 1997 | 悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲 | コナミ | ロールプレイングの成長を加えて方程式を確立 |
| 2004 | 洞窟物語(Cave Story) | 天谷大輔 | 個人開発インディーの可能性を示した |
| 2009 | シャドウコンプレックス | Chair Entertainment | 2.5Dで方程式を復活させたダウンロードゲーム |
| 2015 | Ori and the Blind Forest | Moon Studios | インディー・メトロイドヴァニア復興の代表作 |
| 2017 | Hollow Knight(ホロウナイト) | Team Cherry | 広大な地下王国、高い評価 |
| 2019 | Bloodstained: Ritual of the Night | ArtPlay | 五十嵐孝司さんの精神的続編 |
| 2021 | メトロイド ドレッド | MercurySteam、任天堂 | 2Dメトロイドの新作 |
2000年代以降:インディーゲームが牽引した復興
メトロイドヴァニアが再び注目された背景には、インディー開発者の役割が大きくありました。天谷大輔さんが一人で作った『洞窟物語』(2004年)はメトロイドなどの古典ゲームへのオマージュで、一人の人間がどれほど大きなゲームを作れるかを示し、2Dプラットフォーマーがインディーゲームの形式として定着するのに貢献しました。
Chair Entertainmentは『スーパーメトロイド』を「2Dゲームデザインの頂点」と考え、『シャドウコンプレックス』(2009年)を作りました。その後、DrinkBox Studiosの『Guacamelee!』(2013年)、Moon Studiosの『Ori and the Blind Forest』(2015年)、Team Cherryの『Hollow Knight』(2017年)が次々と高い評価を受けました。
『Hollow Knight』は、オーストラリア・アデレードの小規模チームが、ゲームジャムから生まれたアイデアをクラウドファンディングで発展させた作品です。続編の『Hollow Knight: Silksong』は2019年に発表されたのち、2025年9月4日に発売されました。
元祖の開発者もこの流れに加わりました。五十嵐孝司さんは2015年5月にKickstarterで『Bloodstained: Ritual of the Night』の資金募集を始め、このキャンペーンは当時Kickstarterで最も多くの金額を集めたビデオゲームとなりました。ゲームは2019年に発売されました。
設計の特徴:良いメトロイドヴァニアの条件
五十嵐孝司さんは、ジャンルの核となる要素として、探索を促しつつ主要なルートへと導くマップ、そしてプレイヤーが常に自分の位置を把握できる仕組みを挙げています。これをもとにメトロイドヴァニアの設計原理をまとめると、次のようになります。
- 能力が鍵:新しい能力は戦闘力の強化であると同時に、新しいエリアを開く手段です。プレイヤーは「あ、あのとき登れなかった場所に今なら行けそうだ」という気づきを得ます。
- 記憶に残るエリア:『Ori』シリーズのMoon Studios側は、プレイヤーが場所を覚えること自体が設計の核心だと語っています。エリアごとに色や雰囲気、音楽がはっきりしていなければ、プレイヤーは迷ってしまいます。
- 引き返しの負担を減らす:セーブポイント、ワープポイント、新しい近道が、終盤の退屈な移動を減らしてくれます。
- 環境で語る物語:多くの現代メトロイドヴァニアは、カットシーンやセリフよりも背景や構造物で世界の物語を伝えます。
- つながった設計の難しさ:すべてのエリアがつながっているため、能力を一つ変えるとゲーム全体を見直す必要があります。『Ori and the Will of the Wisps』の制作陣も、この点をジャンル開発の難しさとして挙げています。
現在のメトロイドヴァニア
今、メトロイドヴァニアはインディーゲームで最も活発なジャンルの一つです。2025年初め時点で、Steamでメトロイドヴァニアのタグが付いたゲームは2,200本を超えました。他のジャンルとの融合もよく見られます。Motion Twinの『Dead Cells』はメトロイドヴァニアの構造にローグライトを組み合わせ、『メトロイドプライム』シリーズは同じ探索方式を一人称に移しました。『DARK SOULS』のように、難しいボスが事実上の関門の役割を果たすアクションRPGも、メトロイドヴァニアの影響を受けた例として語られます。
最近では「メトロイドブレイニア(Metroidbrainia)」というサブジャンルもよく話題になります。これらのゲームでは、能力の代わりにプレイヤーの知識が道を開きます。最初から行ける場所はすべて開かれていますが、方法を知らないために先へ進めないのです。『Outer Wilds』(2019年)が代表作に挙げられ、『FEZ』、『The Witness』、『TUNIC』、『ANIMAL WELL』などが同じ系統として語られます。
メトロイドヴァニアの歴史は、「探索する楽しさ」をどう設計するかという問いへの答えの歴史です。最初に行き詰まった壁の前に、新しい能力を携えて戻ってくる瞬間の喜びこそが、1986年から今までこのジャンルを支えてきた最大の力です。