ザ・シムズシリーズ、勝利条件のない人生シミュレーションの代表作
ウィル・ライトが生み出したザ・シムズシリーズの誕生の背景とゲームシステム、名作とされる理由、シムズ2・3・4へと続いた変化、そして今シリーズを楽しむ方法をまとめます。
『ザ・シムズ』(The Sims)は、マクシスが開発し、エレクトロニック・アーツ(EA)が販売する生活シミュレーションゲームシリーズです。プレイヤーは「シム(Sim)」という仮想の人物を作り、家を建てて住まわせ、その1日や人生の面倒を見ます。決められた目標や勝利条件がほとんどないという点で、一般的なゲームというよりおもちゃやドールハウスに近いと評価されてきました。
この記事では、『ザ・シムズ』がどのような発想から始まったのか、実際にどのように遊ぶのか、なぜ長く愛されてきたのか、そしてシリーズがどのように続いてきたのかをまとめます。最後に、今シリーズを始める方法も紹介します。
ひと目でわかる概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売 | 2000年2月4日(第1作、Windows) |
| 開発 | マクシス |
| 販売 | エレクトロニック・アーツ(EA) |
| デザイナー | ウィル・ライト |
| プラットフォーム | Windows、macOS、PlayStation、Xbox、任天堂ハード、モバイルなど(作品によって異なる) |
| ジャンル | 生活(人生)シミュレーション、サンドボックス |
『ザ・シムズ』は、1989年の『シムシティ』から始まったマクシスの「シム」シリーズに属します。シリーズ全体の販売本数は約2億本規模で、史上最も売れたゲームシリーズのひとつです。
誕生の背景
『ザ・シムズ』を生み出したウィル・ライトは、『シムシティ』ですでに名の知られたゲームデザイナーでした。彼は1991年に『シムアント』を発表したあとこのプロジェクトを構想し始めましたが、同じ年にカリフォルニア州オークランドの大火災で家を失いました。失った家や持ち物を一つひとつ買いそろえ直した経験が、ゲームの土台となりました。
アイデアのもうひとつのルーツは、建築家クリストファー・アレグザンダーが1977年に書いた本『パタン・ランゲージ』です。ライトは、見た目よりも使い勝手を中心に空間を設計するこの本の視点に惹かれ、当初は家を設計すると人々がその家を評価する「建築シミュレーター」に近いゲームを考えていました。人間の欲求を段階に分けたマズローの欲求理論も、キャラクターの人工知能を設計する際に参考にしました。
最初から順調だったわけではありません。フォーカスグループの反応は良くなく、マクシスの経営陣も大きな支援はしませんでした。ライトは「プロジェクトX」という名前で、ほかのゲームを作る合間にこの作業を続け、プログラマー1人と一緒にキャラクターの行動システムから磨き上げていきました。開発が進むにつれ、チームは家よりもその中に住む人々のほうがはるかに興味深いことに気づき、ゲームの中心は建築から人へと移っていきました。1997年にマクシスを買収したEAは、『シムシティ』の成功を経験していたこともあり、このプロジェクトにより好意的でした。
ゲームシステム
『ザ・シムズ』のプレイは、大きく3つのモードに分かれています。
- ライブモード:時間が流れ、シムが生活します。プレイヤーはシムに、食事をする、体を洗う、眠る、本を読む、友だちと話すといった行動を指示します。
- 建築モード:時間を止めて壁、床、ドア、窓を配置し、家を建てたり改築したりします。
- 購入モード:家具や家電を買って配置します。第1作では、椅子、テーブル、装飾品、電化製品、照明など、さまざまなカテゴリーの品物があります。
シムには食事や衛生のように毎日満たすべき欲求があり、これを満たさないと機嫌が悪くなり、生活が揺らぎます。「自由意思」のオプションをオンにしておくとシムが自分で動くこともありますが、優先順位をうまく決められず困った状況になることもあります。お金を稼ぐには仕事に就く必要があり、昇進するにはスキルを身につけ、友だちを作らなければなりません。
シムたちは「シム語(Simlish)」という意味のない架空の言語で話します。実在する言語ではないため、プレイヤーが会話の内容を想像で補うことになり、これがシリーズ独特の雰囲気を生み出しています。
なぜ名作なのか
『ザ・シムズ』は発売直後から大きな人気を集めました。2000年にアメリカで最も売れたコンピューターゲームとなり、2001年も1位を守りました。2002年には全世界で630万本以上を売り上げ、当時の『MYST』を抜いて史上最も売れたPCゲームとなりました。2000年のゲーム賞では、複数の「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
評価が高かった理由は、プレイヤーが目標を自分で決められる点にあります。大きな家を建てることに没頭してもいいし、ある家族の物語を作ってもいいし、わざと突拍子もない状況を作って眺めてもかまいません。正解のない遊びであるという点が、それまでのゲームとは異なっていました。
新しいプレイヤー層を広げた点もよく取り上げられます。ウィル・ライトはプレイヤーの60%近くが女性だったと明かしており、普段ゲームをしないライトユーザーも数多く引き込みました。マクシスはゲームの発売前に制作ツールを先に公開し、プレイヤーが自作した服や家具などの「カスタムコンテンツ」を簡単に導入できるようにしました。この文化は、その後もシリーズを通して受け継がれました。2012年には、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が収蔵対象に選んだ14本のゲームのひとつに選ばれました。
シリーズ・影響
本編は4作品が発売され、作品ごとに数多くの拡張パックが加えられました。
| 年 | 作品 | 主な変化 |
|---|---|---|
| 2000 | ザ・シムズ | 拡張パック7本、2Dベースの画面 |
| 2004 | ザ・シムズ2 | 完全3D化、赤ちゃんから高齢者まで7段階のライフステージ |
| 2009 | ザ・シムズ3 | 近所の街をシームレスに歩き回れるオープンな街 |
| 2014 | ザ・シムズ4 | 数多くのパックでコンテンツを拡張、2022年に基本ゲームを無料化 |
『ザ・シムズ3』は発売初週に140万本を売り上げ、当時のPCゲーム史上最大の発売記録を打ち立てました。『ザ・シムズ4』は2017年にPlayStation 4とXbox Oneでも発売され、2022年10月18日から基本ゲームを無料で遊べるようになりました。同じ日にマクシスは次期プロジェクトのコードネーム「プロジェクト・レネ(Project Rene)」を発表し、その後、このプロジェクトは『ザ・シムズ4』を置き換えるのではなく、並行して運営されると明らかにしました。
本編以外にも、オンラインゲーム『ザ・シムズ オンライン』、中世を舞台にした『ザ・シムズ ミディバル』、Facebook向けの『ザ・シムズ ソーシャル』、スマートフォン向けの『ザ・シムズ フリープレイ』や『ザ・シムズ モバイル』など、さまざまな外伝が登場しました。コンソール版はPC版と異なり、ミッションを追っていくストーリーモードを搭載していることが多くありました。
ギネス世界記録は、このシリーズに「最も多くの拡張パックを出したビデオゲームシリーズ」など、いくつもの記録を認定しました。日常を扱うゲームでも大きな成功を収められることを示し、インテリアや生活シミュレーションのジャンルが定着するうえで重要な役割を果たしました。
今遊ぶ方法
最も手軽に始められるのは『ザ・シムズ4』です。基本ゲームが無料なので、PCやMac、PlayStation、Xboxでダウンロードしてすぐに遊べます。ペット、季節、大学生活といったコンテンツは拡張パック、ゲームパック、アイテムパックに分かれているので、基本ゲームを十分に楽しんでから、興味のあるものだけを選んで購入するのがよいでしょう。
昔の作品が気になる場合にも方法があります。シリーズ25周年を迎えた2025年1月31日、EAは第1作と第2作を最新のWindowsで動作するよう調整した『ザ・シムズ レガシーコレクション』と『ザ・シムズ2 レガシーコレクション』を発売しました。それぞれ、当時発売された拡張パックがすべて収録されています。ただし、第1作のレガシーコレクションは発売直後にクラッシュや画面スケーリングの問題などへの不満があり、EAがその後のパッチで対応しました。
初めて遊ぶときは、壮大な目標を立てるよりも、ひとつの家族を作って毎日を見守ることから始めてみることをおすすめします。このシリーズの面白さは、プレイヤー自身が作り上げていく小さな物語にあります。