AAAゲームとは?意味と起源、開発費・人員・制作手法を解説
トリプルA(AAA)ゲームの意味と用語の由来、大手パブリッシャーの制作手法、開発費と人員規模、AA・AAAAといった派生語、近年の開発費高騰が業界に与えた影響をまとめました。
ゲームのニュースやコミュニティを見ていると、「AAAゲーム」「トリプルAの大作」といった言葉によく出会います。なんとなく「お金をたくさんかけた大きなゲーム」という印象はあっても、正確にどのような基準で付けられる名前なのか、いつから使われているのかはあまり知られていません。
この記事では、AAAという言葉がどこから来たのか、どのような会社がAAAゲームを作っているのか、開発費や人員・制作期間はどのくらいなのか、そしてAA・AAAA・IIIのような派生した表現は何を意味するのかを順にまとめます。最後に、開発費が上がり続けたことでゲーム業界にどのような変化が起きたのかも見ていきます。
AAAゲームの意味:公式な基準はない
AAAは「トリプルA」と読みます。中堅以上の大手パブリッシャーが制作または販売し、ほかのゲームよりも開発費やマーケティング費がはるかに多くかけられたゲームを指す業界用語です。
重要なのは、公式な認定や決まった金額の基準がないということです。映画の「ブロックバスター」のように、業界やメディア、ユーザーが慣習的に使っている分類にすぎません。そのため、同じゲームを見てもある人はAAAと呼び、別の人はAAと呼ぶことがよくあります。
それでも、おおむね次の特徴をあわせ持つゲームがAAAと見なされます。
- 大手パブリッシャーまたはプラットフォーム企業(コンソールメーカー)が資金を出し、販売する
- 数百人以上のスタッフが何年もかけて制作する
- 高品質なグラフィック、モーションキャプチャー、声優の収録、オーケストラ音楽など、高い制作水準を備えている
- 映画に匹敵する規模の広告・宣伝を行う
- 複数のプラットフォームで同時に、定価で発売される
用語の由来:債券の信用格付けから借りた言葉
英語版ウィキペディアの「AAA (video game industry)」の項目によると、この表現は1990年代後半にゲーム小売業者が、発売予定のゲームへの関心度を見積もるために使い始めたものとされています。語源は金融業界の債券の信用格付けだという見方が一般的です。信用格付けでAAAは最も安全で信頼できる等級なので、「最も確実に売れそうなゲーム」という意味で借用したわけです。
この頃は、ゲームがCD-ROMのような光学メディアとリアルタイム3Dグラフィックを本格的に使い始めた時期です。カットシーン(演出映像)や音声演技が入るようになり、制作費が大きく跳ね上がりました。代表的な例が、スクウェアのファイナルファンタジーVII(1997)です。ウィキペディアに引用された推定値では開発費は約4,000万〜4,500万ドルで、当時としては最も高額なゲームでした。広告キャンペーンもゲームとしては前例のない規模でした。その後、セガAM2のシェンムー(1999)が推定開発費4,700万〜7,000万ドルでその記録を上回りました。
つまり「AAA」という言葉は、ゲームが映画のように大規模な資本が投じられる産業へと変わっていく時期に、一緒に生まれた名前だといえます。
誰がAAAゲームを作っているのか
AAAゲームは通常、資本力のあるパブリッシャーとその傘下のスタジオから生まれます。大きく2つの系統に分けることができます。
| 区分 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| プラットフォーム保有企業(ファーストパーティー) | ソニー、任天堂、マイクロソフト | 自社コンソールの販売を牽引する独占タイトルを作る |
| サードパーティーの大手パブリッシャー | EA、ユービーアイソフト、テイクツー(ロックスター)、スクウェア・エニックス、バンダイナムコ、カプコンなど | 複数のプラットフォームで同時発売し、長期シリーズを運営する |
パブリッシャーは開発資金を出し、マーケティングや流通、各国向けのローカライズ、プラットフォームの認証といった業務を担います。開発はパブリッシャーの社内スタジオが直接行うこともあれば、外部の開発会社と契約して任せることもあります。最近では、1本の大型ゲームを複数の国のスタジオや外注会社が分担して作る方式が一般的です。
開発費はどれくらいかかるのか
AAAゲームの開発費は、ほとんどの会社が公表していません。そのため知られている数字は、たいてい推定値か、訴訟や規制当局の文書を通じて明らかになったものです。出典のある代表的な数値だけを時代順に見ると、次のとおりです。
| 時期 | 事例 | 知られている規模 |
|---|---|---|
| 1997年 | ファイナルファンタジーVII | 開発費 約4,000万〜4,500万ドル(推定) |
| 第7世代コンソール(2000年代後半) | 新作AAA全般 | 開発費 おおよそ1,500万〜2,000万ドル |
| 2007年 | Halo 3 | 開発費 約3,000万ドル、マーケティング費 約4,000万ドル(推定) |
| 2013年 | GTA V | 約2億6,500万ドル(推定) |
| 2024〜2025年発売予定作 | 英国CMA報告書のAAA平均 | 平均2億ドル以上 |
| 2015〜2020年 | コール オブ デューティ シリーズ3作 | 1作あたり4億5,000万〜7億ドル(裁判所文書) |
特に目を引くのは最後の2行です。2023年にマイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザードの買収を審査した英国競争・市場庁(CMA)の資料では、2024〜2025年の発売を目標に承認されたAAAゲームの平均開発予算が2億ドル以上だと明らかにされました。2018年ごろに5,000万〜1億5,000万ドルだったことと比べると、数年の間に大きく上昇したことになります。また、別の訴訟の過程では、コール オブ デューティ3作の予算が1作あたり4億5,000万〜7億ドルだったことも明らかになりました。
ここにマーケティング費が別途加わります。Halo 3の事例のように、マーケティング費が開発費を上回るケースもあります。
人員と制作期間
お金がかかる最大の理由は、結局のところ人と時間です。ウィキペディアに引用されたEA DICE関連の資料によると、第7世代コンソールの時期にAAAを作る開発会社の数は約125社から25社前後に減りましたが、ゲーム1本に必要な人員はおよそ4倍に増えました。ユービーアイソフトのオープンワールドゲームは、400〜600人が複数の国の拠点に分かれて共同で制作したと紹介されています。
極端な例として、ロックスター・ゲームスのレッド・デッド・リデンプション2(2018)は前作の発売直後から8年以上かけて開発され、総勢約2,000人、コアチームだけで約1,600人が参加したとされています(英語版ウィキペディアによる)。
AAAの制作は、通常次のような段階を経ます。
- コンセプト・プリプロダクション:少人数のチームが企画、プロトタイプ、技術検証を行います。
- プロダクション:人員を大幅に増やし、マップ、キャラクター、クエスト、演出などのコンテンツを大量に作ります。予算の大半はここで使われます。
- アルファ・ベータ・QA:機能を完成させたあと、多くのテスターがバグを見つけて修正します。
- 発売とライブ運営:パッチ、拡張パック、シーズンコンテンツを継続して提供します。
この過程が長くなるため、発売直前の長時間労働、いわゆるクランチが繰り返し問題になってきました。レッド・デッド・リデンプション2も、開発当時の勤務時間の問題で議論を呼びました。
マーケティング:映画並みの宣伝
AAAゲームは発売の数年前からトレーラーを公開し、大型ゲームイベントで発表し、テレビや屋外広告まで活用します。ウィキペディアの項目は、第7世代コンソールの時期のAAAゲームが、ハリウッドのブロックバスター映画に近い水準のテレビ・看板・新聞広告を展開したと説明しています。発売初週の販売が成否を大きく左右するため、予約特典や限定版といった販売戦略もあわせて使われます。
AA、AAAA、III:派生した表現
AAAという言葉が広まるにつれ、似た表現もいくつも生まれました。こちらも公式な基準はなく、使う人によって意味が少しずつ異なります。
AA(ダブルA)
大手パブリッシャーの一軍スタジオではないものの、プロフェッショナルな開発体制を備えた中規模のゲームです。ウィキペディアはおおむね50〜100人規模のスタジオを例に挙げ、価格もAAAより低いことが多いと説明しています。例として、PUBG: BATTLEGROUNDS、DayZ、フランスのスタジオSandfall InteractiveのClair Obscur: Expedition 33(2025)などが挙げられます。
AAA+
最も売れた、あるいは制作水準が最も高いAAAを強調するときに使われることもあれば、発売後もシーズンパスやアイテム販売などで収益を上げ続けるライブサービス型のAAAを指すこともあります。
AAAA(クアドラプルA)
2020年ごろ、次世代コンソールの発売を前に一部の会社が使い始めた言葉です。マイクロソフト傘下のスタジオThe Initiativeが開発していた『パーフェクトダーク』が自らをAAAAと紹介しましたが、このゲームは結局開発中止となりました。ユービーアイソフトも『ビヨンド・グッド アンド イービル2』と『スカル アンド ボーンズ』をAAAAと表現しました。しかし、業界全体で定義が合意されたことはなく、マーケティング用の誇張表現だという批判も受けました。
III(トリプルI)
インディー(独立系)の資金で作られながらも、AAA出身の開発者が参加するなど、規模と完成度の高いゲームを指す言葉です。ウィキペディアはHellblade: Senua's SacrificeやThe Witnessなどを例に挙げています。
開発費の高騰がもたらした変化
開発費が上がれば、失敗したときの損失も大きくなります。そのため、この10年あまりの間にAAA業界ではいくつかの明確な流れが生まれました。
ゲーム1本の失敗が、スタジオ1つの閉鎖につながりかねない構造になりました。
- 実績あるシリーズへの集中:新しいIPよりも、続編、リメイク、リブートのようにすでにファンがいる作品に投資が集まります。ウィキペディアは、アクティビジョンが傘下のRadical Entertainmentを、新作がかなりの販売を記録したにもかかわらず閉鎖した事例を挙げています。
- 似たようなゲームの繰り返し:リスクを減らそうとするあまり、ジャンルや演出が似通ってきているという批判が出ました。ユービーアイソフトのゲームディレクター、アレックス・ハッチンソンは、フランチャイズ中心のAAAモデルがゲームの奥深さよりもグラフィック競争に流れかねないと指摘したこともあります。
- 発売後の収益モデル:拡張パック、シーズンパス、見た目を変えるアイテムの販売のように、発売後も継続して収益を上げるライブサービス構造が増えました。
- インディーとAAの成長:大作が冒険を控える間に、小さなチームが実験的なゲームで注目を集めました。2010年代のインディーゲームブームとAA市場の成長は、こうした背景と結びついています。
- 労働問題:大規模プロジェクトのスケジュールの圧迫により、クランチ問題がAAA開発の代表的な影の部分として挙げられています。
逆に、ゲームエンジンとデジタル流通が発展したことで、小さなチームでも以前ならAAAでしか実現できなかった水準の成果物を出すケースが増えました。そのため最近では、AAAとAA、インディーの境界がしだいに曖昧になっているという評価が多く見られます。
まとめ
AAAは「大手パブリッシャーが大きな予算と多くの人員を投じて作った大作」を指す非公式の用語です。1990年代後半に債券の格付けから名前を借り、ファイナルファンタジーVIIのような作品とともに定着しました。その後、開発費は数千万ドルから数億ドル単位へと膨らみ、その結果、シリーズへの集中、ライブサービス、インディー・AAの成長といった変化が続きました。
結局のところ、AAAという名前はゲームの面白さや完成度を保証する等級ではなく、制作規模を説明する言葉に近いものです。ゲームを選ぶときは、ラベルよりも実際のプレイ体験や評価をあわせて見るのがよいでしょう。