プレイヤーはなぜ遊び続けるのか:ゲームの報酬と動機の設計
バートルのプレイヤータイプ、自己決定理論の自律性・有能感・関係性、スキナー箱と変動比率の報酬、モンスターハンターの繰り返し構造まで。ゲームが人を引きつける原理と、その責任をあわせてまとめます。
「あと1回だけ」と言いながら明け方までゲームをした経験は、誰にでもあるでしょう。何が私たちを次のプレイへと導くのでしょうか。レベルが上がるときの効果音かもしれませんし、今度こそ良い装備が出るかもしれないという期待かもしれませんし、友達と一緒に遊ぶ楽しさかもしれません。
この記事では、ゲームデザイナーがプレイヤーの動機を理解するときによく使う三つの枠組みを紹介します。プレイヤーをタイプ別に分けたバートルの分類、人が自分から何かをしたくなる条件を説明した自己決定理論、そして報酬のタイミングを扱う行動主義心理学です。最後に、こうした原理を使う開発者が守るべき一線についてもお話しします。
同じゲーム、違う理由:バートルのプレイヤータイプ
1996年、ゲーム研究者のリチャード・バートル(Richard Bartle)は、オンラインゲーム(MUD)のプレイヤーがゲームの中で何を楽しんでいるかをもとに、四つのタイプを提案しました。もともとはマルチプレイゲームのプレイヤーのための分類でしたが、今では一人で遊ぶゲームについて語るときにも広く使われています。
| タイプ | 楽しむもの | ゲーム内の例 |
|---|---|---|
| アチーバー(Achiever) | スコア、レベル、装備のような目に見える成果 | 達成率100%、実績 |
| エクスプローラー(Explorer) | 世界の隅々と隠されたルール | 秘密の場所、隠し要素 |
| ソーシャライザー(Socializer) | 他のプレイヤーとの交流 | ギルド、チャット、協力 |
| キラー(Killer) | 他のプレイヤーとの競争と影響力 | 対戦、ランキング |
バートルは、この四つのタイプを二つの軸で説明しました。一つの軸は他のプレイヤーに向かうのか、ゲームの世界に向かうのか、もう一つの軸は相互作用を求めるのか、一方的に行動することを求めるのかです。
この分類がデザイナーに与える最大の教訓は、「すべてのプレイヤーが同じ理由でゲームを遊んでいるわけではない」という事実です。例えばアチーバーは、純粋に見た目だけの報酬を手に入れるためにも大きな努力を払います。マイクロソフトがXbox Liveに導入したゲーマースコアのように、難しい実績を達成するとポイントが積み上がるシステムは、こうしたプレイヤーのための仕組みです。一方、エクスプローラーにとって実績ポイントはあまり意味がなく、誰も知らない地形の裏に隠された部屋一つのほうが大きな報酬になります。
もちろん実際の人間は、一つのタイプにぴったり当てはまるわけではありません。バートルの分類をもとに作られたオンラインテストも、複数のタイプの割合を合わせて示す方式でした。一人の中にもさまざまな動機が混ざっているということです。
自分からやりたくなる三つの条件:自己決定理論
心理学者エドワード・デシ(Edward Deci)とリチャード・ライアン(Richard Ryan)が1985年に本としてまとめた自己決定理論(Self-Determination Theory)は、人が「やりたいから」何かをする内発的動機に注目しています。二人は、この動機を支える三つの基本的欲求を示しました。
- 自律性(autonomy):自分が選んでいるという感覚
- 有能感(competence):自分はうまくやれていて、だんだん上達しているという感覚
- 関係性(relatedness):他の人とつながっているという感覚
この理論はもともと教育、仕事、健康といった分野を扱うものですが、ゲームに当てはめると驚くほどよく合います。
自律性は、開かれた世界、複数の解法、好きな順番で選べるステージから生まれます。『ロックマン』シリーズのように、ボスを選ぶ順番をプレイヤーに任せる構造がよい例です。
有能感は、明確なフィードバックから生まれます。自分が何をうまくやったのか、前回より何が良くなったのかをゲームがはっきり教えてくれるとき、有能感が生まれます。反対に、実力と関係なく運だけで結果が決まると、有能感は積み上がりません。
関係性は、協力、競争、ギルド、そして一人で遊ぶゲームでは愛着の湧く登場人物から生まれます。
自己決定理論の観点から見ると、よいゲームは報酬を「与える」ことと同じくらい、プレイヤーが自分からやりたくなる条件を「作る」ことに力を注いでいます。
報酬のタイミング:スキナー箱と変動報酬
ゲームの報酬構造を語るうえで欠かせないのが、行動主義心理学者B・F・スキナーの実験です。スキナーは、レバーを押すとエサが出る箱(よく「スキナー箱」と呼ばれるオペラント条件づけの実験装置)を使って、動物が報酬に応じて行動を学んでいく過程を研究しました。
この研究での重要な発見の一つは、報酬の与え方が行動に大きな影響を与えるということです。
- 連続強化:行動するたびに報酬を与えます。早く学習しますが、報酬が途切れると行動もすぐに止まります。
- 固定比率強化:決まった回数ごとに報酬を与えます。「10匹倒したら報酬」のようなものです。
- 変動比率強化:平均すると何回かに1回ですが、正確にいつ出るかはわかりません。反応の頻度が最も高く、報酬が途切れても行動が最も長く続きます。スロットマシンの前のギャンブラーが代表的な例として挙げられます。
ゲームはこの原理を昔から使ってきました。モンスターを倒すたびに何が落ちるかわからない「ドロップ」システムは、まさに変動比率の報酬です。
コアループとモンスターハンター
ゲームデザインでは、プレイヤーが繰り返す行動の輪を「コアループ」と呼びます。行動し、報酬を受け取り、新しい可能性が開かれ、また行動するという循環です。
カプコンのモンスターハンターシリーズは、この構造の代表的な例としてよく挙げられます。
- モンスターを狩猟したり捕獲したりします。
- モンスターの素材を手に入れます。
- 素材でより強い武器や防具を作ります。
- 強くなった装備で、より難しいモンスターに挑みます。
ここに素材がランダムに出るという点(変動比率)が加わり、欲しい素材を手に入れるために同じクエストを何度も繰り返すことになります。このループが強力なのは、報酬が次の挑戦のための道具になるからです。報酬がそれ自体で終わらず、次の目標へとつながっていきます。
ゲームが序盤に強い状態を一瞬見せた後でその力を取り上げ、もう一度育てさせたり、強力な登場人物を見せて「君もああなれる」という目標を植えつけたりするのも、ループを始めさせるよくある方法です。
報酬設計の影
同じ原理がプレイヤーにとって害になることもあります。繰り返し行動をあおるループは、コンテンツの穴を埋める手段として使われることもあります。面白い挑戦の代わりに、退屈な繰り返しとランダムな報酬だけでプレイ時間を延ばすのです。特に現金で買えるガチャ型アイテム(ルートボックス)は、変動比率の報酬と課金を直接結びつけるという点で、多くの国で規制の議論が続いています。
自己決定理論の視点から見ると、問題はさらにはっきりします。外的な報酬だけに頼るゲームは、報酬が途切れた瞬間にプレイヤーが去っていきます。反対に、挑戦そのものが面白く、上達しているという感覚がはっきりしているゲームには、報酬が大きくなくても人が戻ってきます。繰り返し作業に報酬をぶら下げる方式と、はっきりした進歩のシグナルとともに挑戦を乗り越えさせる方式は、見た目は似ていても、プレイヤーに残すものが違います。
小さなスタジオが守ろうとしている原則
私たちが報酬と動機を設計するときに守ろうとしている原則は、次のとおりです。
- 報酬より手ごたえが先です。 報酬をすべて取り除いても1プレイが面白いかを、まず確認します。
- 上達しているというシグナルを出します。 記録、星の評価、短くなったクリアタイムのように、有能感を示す情報を隠しません。
- ランダムな報酬に課金を結びつけません。 運は楽しさを加える調味料であって、財布を開かせる仕組みになってはいけないと考えています。
- やめるときは気持ちよくやめられるようにします。 ログインを強いる仕組みよりも、次にまた起動したくなる理由を残します。
RICOSHOTは予測軌道を表示するので、失敗しても「角度を少し変えればいいんだ」とすぐにわかります。失敗がそのまま次の挑戦の手がかりになる構造は、有能感を守る最もシンプルな方法です。アクションチャンギのように人と対戦するゲームでは、ランキングや報酬よりも一局一局の読み合いそのものが動機になるよう、最初の10局を無料で遊べるようにしました。
おわりに
人がゲームを続ける理由は一つではありません。成果を集める楽しさ、知らない場所を訪ねる好奇心、誰かと一緒に過ごす喜び、勝ちたいという気持ちがすべて混ざっています。よいゲームは、こうした気持ちを利用するよりも尊重します。「あと1回だけ」が楽しい思い出として残るゲーム、私たちが作りたいのはそういうゲームです。

